カンファレン結果報告
デジタル貿易カンファレン結果報告
カンファレン詳細
日時 | 2024年12月11日(水) 16:00~17:30 セミナー及びパネルディスカッション 17:30~18:30 ネットワーキング |
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開催場所 | 日本商工会議所会議室 |
参加者 |
国際商業会議所日本委員会 会員企業およびデジタル貿易に関心のある企業 40名 パネルディスカッション登壇者 7名 |
開催内容
第一部:セミナー(ビデオ)
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「A Status Check on Digital Trade Worldwide」
ICC Digital Standards Initiative (DSI) シンガポール局Ms. Pamela MARS- 貿易デジタル化には4つの課題解決が必要。即ち、標準化・信頼性の担保・法改正・実行。
- DSIではその実行のためのツールを用意している
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「貿易における貨物保険証券データのグローバルスタンダード策定について」
ICC DSI Industry Advisory Board Member 東京海上日動火災保険(㈱)新谷 哲之介氏- 貨物保険証券データの標準化は日本主導で推進。2019年に損保3社が共通標準化を策定、2023年から国連CEFACT日本委員会で標準化作業開始。日本の損保会社はこの標準化の動きをリードすることで、他国に対して競争優位を享受している。
第二部:パネルディスカッション
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基調講演日本の貿易手続デジタル化の現状と経産省の取り組み」
経済産業省通商政策局貿易振興課 課長補佐 石田励示氏
- デジタル化の目的は、貿易コスト削減と有事の際のサプライチェーンの強靱化。
- 課題は、貿易プラットフォームのユーザー拡大・国際標準に準拠した貿易分野データ連携・貿易相手国とのデジタル化に向けた連携。
- 経済産業省では、こうした課題解決のため12のアクションプランを推進中。
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パネルディスカッションにおける各パネラーの発言のポイント
株式会社トレードワルツ 代表取締役 執行役員社長兼CEO 佐藤 高廣氏
- 貿易業務の完全電子化には、すべての関係者がワンストップでつながる共通のプラットフォームが必要。トレードワルツはグローバルスタンダードとなるプラットフォームの提供を目指している。
Global LEI財団 日本事務所 代表 中武浩史氏
- LEIは、デジタル貿易における法人ID。ISOの規格に基づき各国の認定機関によって発行され、欧米では義務化、日本でも2024年から制度化されている。世界50カ国の規制当局・中央銀行の監督により、グローバル標準としての品質を担保している。
国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA) 常務理事・事務局長 河地 久直氏
- JIFFAは、商法改正を待って2026年からのeBL(日本法準拠)利用開始を進めている。一方、MTBL(Multimodal Transport B/L)が電子BLになると税関申告を含む輸出入手続きがペーパーレス化されるため、FIATAのeBL(MLETR適用)を発行できるJIFFA会員は、商法改正を待たずに電子BL発行への要望に対応できる。
株式会社みずほ銀行 グローバルトランザクション営業部 一木 明佳氏
- 次世代ビジネス創出プロジェクトとして、関連機関と協調して貿易プラットフォーム構築やクロスボーダー送金高度化プロジェクトに参画している。また、中小企業の資金調達サポートとしてサステナビリティチェーンファイナンスを開始した。
豊田通商株式会社 物流部 統括・企画グループ 葛城 僚祐氏
- 商社における膨大な物流業務のデジタル化により、書類の保管費用や輸送費用の削減効果があった。一方、物流業務の範囲が変化しており、商社として新しい付加価値の提供の再考が必要。
また、デジタル化では初期投資の負担が重く、中小企業を中心に政策面での支援が必要。
総 括
モデレーター:一般社団法人 日本情報経済社会推進協会 主席研究員 横澤 誠氏
質疑応答および参加者のアンケートから、デジタル貿易の現状と課題について以下が明確になった。
- 現状:デジタル化に対して多くの国・地域で制度設計運用者の意識と企業の期待感に温度差があり、デジタル化推進のそもそもの前提条件を揃えるところから始めないといけないようだ。
- 法制面での取り組み:機運を盛り上げ、デジタル化を推進するには、法制度からの後押しが必要。具体的には、デジタル化の義務化や初期投資への補助金など。
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産業面での取り組み:グローバルな共有システムとするため、標準化(統一システム)あるいはInteroperability(相互運用性、異なるシステム間で運用が可能) が必要。
貿易業界は、eBLの法整備を最優先としつつ、貿易プラットフォームのセキュリティ対策強化と導入促進を強く望んでいる。 - 実現に向け、継続的な観測と、モニタリングが必要。関係機関として積極的に発信・関与していく。